平成天皇の即位に続き、今上天皇の即位でも「恩赦」が行われることが閣議決定されました。交付日は10月22日になっています。
平成天皇の即位や、1993年の皇太子さま(現在の天皇陛下)結婚の時にも恩赦は実施されました。慶事による恩赦は、実に26年ぶりのできごとです。
ニュースでは、対象者が55万人と報道されました。そのため、55万人の犯罪者が無罪放免になるのではと、勘違いをされた方もいらっしゃいます。
しかし、決して刑務所に収容されている囚人が、55万人出所できるということではありません。
今回実施される恩赦の内容や対象となる犯罪などについて、簡潔に紹介します。
目次
天皇陛下の即位礼正殿の儀に合わせ55万人に恩赦、罰金刑から3年経過した人の「復権」が対象
今回、天皇陛下の即位礼正殿の儀に合わせて恩赦の対象となるのは、およそ55万人です。
対象となるのは、
- 罰金刑
- 罰金を納め終わって3年が経過していて、再度の処罰を受けていない
という人に限られます。
そして、恩赦の内容は「復権」に限定されています。有罪を受けたために失った資格が、今回の恩赦で回復されます。
一番わかりやすい事例が、交通違反で免許停止処分となった人です。
3年前までに罰金を納付していて、再度犯罪をしていない人は、もう一度免許を取り直すことができるようになります。
特別基準恩赦はかなり限定的
罰金刑の人の復権が行われると同時に、今回の恩赦では「特別基準恩赦」も実施されます。
こちらは、罰金刑以外の懲役・禁固といった刑を言い渡されている人も対象です。
しかし、法務省の発表では、これは「病気等で長期間刑の執行が停止され,なお長期にわたり執行困難な者に対する、刑の執行の免除」とされています。
つまり、ほとんど寝たきりで回復の余地もなく、懲役刑に服することができない方などが、刑を免除されるだけです。
55万人の恩赦は罰金刑の「復権」がほとんどで、この「特別基準恩赦」に該当するのはごく一部。
現在刑務所に収容されている、大半の囚人の刑が短くなる・無罪になるということはありません。
平成以降の恩赦は国民感情に配慮、対象者の多くは交通違反で重大犯罪の恩赦には消極的
今回の即位礼正殿の儀に合わせての恩赦を含め、最近の恩赦は国民感情に配慮した、限定的なものとなっていることがほとんどです。
今回のように、罰金刑の復権のみに絞られると、対象者は多くが交通違反で処罰された人となります。
日本では、慶事があった際の恩赦がたびたび行われてきましたが、平成以降は重大犯罪の減刑といったことが行われていません。
かつて日本では、恩赦に際して死刑囚の減刑が行われたこともありました。
しかし、これらは少年法改正で犯行時未成年だった囚人が減刑されるなど、特殊な事情があった、かなり前のできごとです。
平成以降、死刑囚の減刑など、重大犯罪への減刑や刑の執行免除は行われていません。
犯罪者の社会復帰促進などの目的で実施される即位礼正殿の儀の恩赦、国民の反対意見も多数
今回実施される恩赦は、
- 罪を犯した者の改善更生の意欲を高めさせる
- 社会復帰を促進する
という目的で実施されます。
しかし、世論ではこの恩赦という制度に反対する声も多いです。
確かに、犯罪をした人には「得」になりますが、罪を犯さずに生活してきた方には何のメリットもありません。
犯罪で被害を受けた方の気持ちに配慮すべき、という声もあります。
公職選挙法違反などを犯した人が、政府の決定で「復権」できることを問題する方も少なくありません。
国民感情に配慮し、かなり限定的に実施される今回の恩赦ですが、それでも完全に国民に理解を得ることはできていない状態です。
26年ぶりに即礼正殿の儀で55万人に恩赦、時代錯誤・政治利用との声も
26年ぶりに実施される恩赦ですが、時代錯誤や政治利用といった声も多く、一般の方はもとろん、専門家でも恩赦に対する意見は分かれます。
恩赦の内容について誤解している方も、決して少なくありません。
閣議決定をした安倍政権に説明責任を求める声もある中、恩赦の公布がなされる22日に、何らかのコメントが出されるか注目しましょう。
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