映画「ツナグ」は、直木賞作家・辻村深月による同名小説、吉川英治文学新人賞受賞の「ツナグ」が原作のファンタジードラマです。
2012年10月6日に公開され、公開第2週の土・日曜は興収1億4,274万5,800円、動員は11万7,830人(累計興収6億4,596万5,600円、累計動員54万8,132人)になり映画観客動員ランキング第1位を獲得しました。
主人公は、本作が映画単独初主演となる、松坂桃李さんが演じます。そして、祖母役に樹木希林さんが出演しているほか、主人公を囲む登場人物も豪華な顔ぶれです。松坂桃李さんは、翌2013年に行われた第36回日本アカデミー賞で新人俳優賞を獲得しました。
「あなたがもう一度、会いたい人は誰ですか?」「奇跡は、一度だけ、想いをつなぐ。」大切な人を亡くした者と死者を一度だけ再会させる仲介人「ツナグ」という職業を通じて、他人の人生に深くかかわっていく青年の葛藤と成長を描いた作品です。
目次
『ツナグ』作品詳細
直木賞作家・辻村深月による同名小説を映画化したヒューマンドラマ。大切な人を亡くした者と死者を一度だけ再会させる仲介人「ツナグ」という職業を通じて、他人の人生に深くかかわっていく青年の葛藤と成長を描く。
一見するとごく普通の男子高校生・歩美は、祖母アイ子からツナグを引き継ぐ見習いとして、死者との再会を望むさまざまな人と出会っていく。しかし、死者との再会が救いになるのか、人生は変わるのか、次第に自身の行為に疑問を抱くようになる。
映画「麒麟の翼」、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」など話題作への出演が続く注目の俳優・松坂桃李が、初の単独主演。祖母アイ子役の樹木希林のほか、佐藤隆太、桐谷美玲、橋本愛、八千草薫、仲代達矢らが共演。監督は「ROOKIES 卒業」の平川雄一朗。
『ツナグ』作品データ
- 製作年 / 2012年
- 製作国 / 日本
- 配給 / 東宝
- 上映時間 / 129分
『ツナグ』主要キャスト一覧
- 松坂桃李 / 渋谷歩美役
- 樹木希林 / 渋谷アイ子役
- 佐藤隆太 / 土谷功一役
- 桐谷美玲 / 日向キラリ役
- 橋本愛 / 嵐美砂役
- 大野いと / 御園奈津役
- 遠藤憲一 / 畠田靖彦役
- 別所哲也 / 渋谷亮介役
- 本上まなみ / 渋谷香澄役
- 浅田美代子 / 御園奈々美役
- 八千草薫 / 畠田ツル役
- 仲代達矢 / 秋山定之役
『ツナグ』主要スタッフ一覧
- 監督 / 平川雄一朗
- 製作 / 藤本鈴子
- 製作指揮 / 城朋子 / 長坂信人 / 市川南
映画『ツナグ』主題歌はJUJUの未発表曲『ありがとう』
作詞:Satomi 作曲:川口大輔 編曲:蔦谷好位置
映画「ツナグ」の主題歌を歌っているのは、女性シンガーソングライターのJUJUさんです。
この楽曲はデビュー当時からライブでずっと歌い続けてきたそうですが、これまでCDリリースされたことはなく、映画「ツナグ」の公開に合わせて、2012年10月10日に22枚目のシングルとしてリリースされました。
JUJUさんのコメント
「『ありがとう』は、約7年間あたため続けた、私にとっても大切な楽曲です。人と人との絆の大切さを描いた作品だからこそ、かけがえのない人に出逢えたことに“ありがとう”と、思って頂ける楽曲になっていることを願っております」
『ツナグ』のあらすじ・内容は?
「死んだ人に会わせてくれる『ツナグ』って人がいるんだって。」そんな、都市伝説のような話に、誰もが耳を傾けます。
祖母の渋谷アイ子(樹木希林)の後を引き継ぎ、『ツナグ』として、男子高校生の渋谷歩美(松坂桃李)は、生きている者と死者との再会を仲介します。
歩美は、三人の依頼者のそれぞれが会いたいと望む死者に引き合わせていきます。
様々な人の想いが交差するこの世の中。皆、それぞれ人には言えない気持ちを抱えています。死んでしまった人に何を話したいのか。何を聞きたいのか。
依頼人の抑えきれない感情を目の当たりにしながら、歩美もまた成長していく感動作です。
以下ネタバレを含む内容となります。これから映画をご覧になる方はご注意下さい。
母との再開を依頼した男性
一人目の男は、死んだ母に土地の権利書のありかを聞き出したいと、半ば『ツナグ』を馬鹿にしたような様子で依頼した畠田靖彦(遠藤憲一)です。
死者に会えるのは「夜の間、一晩だけ。」と、ルールを確認し部屋へ向かいます。
口実は権利書でも、本当は母と再会し、自分の気持ちを聞いてほしかったから。母の死をきっかけに息子と溝ができてしまったことへのもどかしさを感じ、いたたまれない気持ちを母に話し、助言をしてもらいます。
親友を亡くした女子高生
二人目は親友に会いたいと話す同じ高校の女子生徒、嵐美砂(橋本愛)。表面では仲良くしていても心の中にはいつも親友への嫉妬があり、劣等感に悩まされています。
ある寒い日の通学中、いつも自転車で通る坂道。一軒家のわきにある蛇口から水が流れ出たままになっています。凍結し、滑りやすくなっていることを密かに想定しながらも学校に行くと、親友はその日、坂道で事故に会い亡くなったのだと知らされます。
親友が最後に残した「どうして?」という言葉に不安をおぼえ、自分の殺意にもとれる裏切りに親友は気が付いていたのか確かめにいったのです。
失踪した恋人を捜す男性
三人目は『ツナグ』で再会することで愛する恋人の死を受け入れなければならなかった男、土谷功一(佐藤隆太)。
なぜ彼女は突然自分の前から姿を消したのか。自分をだましていたのか。発覚していく彼女のうそ。何を信じてよいのかわからず、これからを進めない男の気持ちと、本当に愛しているからこそ、自分にけじめをつけようと、優しいウソをついたまま事故にあい、命を落とした彼女。
生前、彼女が大切にしていた宝箱に、自分との思い出が詰まっていることを知り、彼女の気持ちに気が付きます。そして、アイ子は歩美の両親について話し出します。
歩美の父は『ツナグ』でした。そのことを知ってか知らずか、不審に思っていた歩美の母は、夫の行動を探るべく、見たら死んでしまうという鏡を知らずに見てしまう。
ちゃんと話をしていればこんなことにはならなかった、両親が死んだのは自分のせいだと歩美に告白します。アイ子もまた、深い後悔をかかえたまま生きてきたのです。
歩美は真相を聞くも、両親には会わずして正式に『ツナグ』を引き継ぐのです。
『ツナグ』を見た感想
『ツナグ』は、大切な人が蘇り、ハッピーエンドというわけではないのに、心が軽くなるような映画です。
これからも背負っていくものは変わらなくても、前を見て歩んでいける希望が表われているようです。エンディングのシーンがすべてをあらわしています。
誰でも持っている迷いや、嫉妬、後悔など、人間の心の内を隠さず物語っているので、登場する人物たちに感情移入し、共感し涙があふれます。今を大切に出来るだけ後悔しないように生きたいと思いました。
想いを抱え、それでも前を向いて生きていく。
死んだ人にもう一度逢いたいと思う気持ちは当然です。本当に『ツナグ』があったら胸が高鳴ります。でも、もしかしたらそれは、生きている人のエゴなのかもしれません。
死の覚悟ができている人はいるかもしれないけれど、一つも思い残さず旅立つ人なんているのでしょうか。
もう会えないから、そこで初めて誤魔化すことなく相手に思いを伝えるのではなく、今を面と向かって向き合うことが必要だと思います。限りある時間だからこそ、後悔を残さないよう、今一緒に過ごす時間や会話を大切にしようと、訴えかけられたようでした。
大切な人をなくし自分の時間も一緒に止まったような気さえしている。でも、大切な人はいつでも心にいます。こんな時あの人はどんな言葉をかけ、どんな行動をするのだろう。その人を感じながら、前に進めばいいのです。そんな自信をもらえる作品です。
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