『スター・ウォーズ9/スカイウォーカーの夜明け』女性同士のキスシーンが物議!シンガポールや中東では削除され公開

2019年12月20日に公開された『スター・ウォーズ9/スカイウォーカーの夜明け』。1977年から始まった『スター・ウォーズ』シリーズの集大成として、世界各地で大ヒットを記録しています。

そんな中で話題になったのが、女性同士によるキスシーンの存在です。なにせ同性のキスが描かれたのはスターウォーズの長い歴史でも初めてのこと。LGBTの権利が広く認められ、時代が大きく変化したことを象徴する場面といえるでしょう。

しかし、このキスシーンがシンガポールでは削除されたというニュースが報じられ、世界的に物議を醸しています。今回は問題となったシーンについて、もう少し具体的に掘り下げてみましょう。

同性同士のキスシーンが削除された国

問題となったのは『スカイウォーカーの夜明け』のラスト、銀河に平和が戻り歓喜に沸くレジスタンスを映したシーンです。短いカットですが、モブの女性2人が抱き合ってキスを交わしているのが分かります。

ディズニー側は具体的な国名を明らかにしていませんが、少なくともシンガポールのほかにドバイとアラブ首長国連邦(UAE)で当該シーンを編集したバージョンが上映されたとのこと。

その一方で、同性愛の描写が検閲されている中国では、特にカットされることなく上映されたようです。このあたりは、中国国内でも情勢が変化しつつあるのでしょう。

ちなみにシンガポール当局にしても、作品を一方的に検閲したというわけではなく、年齢指定を避けるためディズニー側が自主的に編集を行ったそうです。

シンガポールで同性愛は認められていない?

かつてイギリスの植民地だったシンガポール。その影響は現在においても根強く、性に関する厳格な法(いわゆるソドミー法)が遵守されています。

具体的にいえば、シンガポールでは同性結婚が認められておらず、男性同士が性的関係を持つことも違法とされています。

最近ではLGBTの権利運動も盛んに行われ、実際に法改正に向けた動きも出ているようですが、やはり当局の規制は厳しいようです。

こうしたことを背景として『スカイウォーカーの夜明け』はキスシーンをカットされた上で、PG13(13歳未満の子どもは保護者の指導が必要)の指定を受けることになったのです。

ちなみに、男性同士のロマンスを描いた映画『ブロークバック・マウンテン』(2005年)は同国でR21に指定されており、もしも『スカイウォーカーの夜明け』がノーカットで公開されていれば、それに近い年齢制限がかけられていたかもしれません。

子どもが鑑賞できないというのはディズニーにとって不本意なもの。すべての人に『スターウォーズ』を楽しんでもらうため、今回の苦渋の決断に至ったといえるでしょう。

LGBTのキャラクターは他にもいる?

冒頭でも書きましたが、『スターウォーズ』シリーズで同性のキスが描かれたのは初めてのことです。しかし、実を言えばスピンオフ作品の中で、すでにLGBTのキャラクターは登場していました。

まず挙げられるのは、TVアニメーション作品『スターウォーズ 反乱者たち』に登場するオーカとフリックスのコンビ。作中でも関係をほのめかす描写がありましたが、実際に2人はゲイのカップルであることがプロデューサーによって明らかにされています。

また、スピンオフ映画『ハン・ソロ/スターウォーズ ストーリー』で活躍したランド・カルリジアンも、実はパンセクシャルであったことが脚本家によって明言されています。

作中では女性型ドロイドL3-37を引き連れていたカルリジアンですが、そのセクシュアリティの範囲は広かったようです。ファンのなかにはハン・ソロとのあいだに友人以上の関係性を見てとった人もいるようですが、あながち間違いではないのかもしれません。

J・J・エイブラムス監督のコメント

ちなみに、『スカイウォーカーの夜明け』でキスシーンを入れた理由については、J・J・エイブラムス監督本人もインタビューの中で言及しています。

それによると、彼は「ここは歓喜に沸く場面だと思い、あらゆる体験の一部として同性カップルを見せた」とのこと。また、そうして「すべての人が集まり迎え入れられることこそ、スターウォーズの宇宙なのだ」とも語っています。

かなり早い段階から、彼は『スター・ウォーズ』で同性愛が描かれる必然性を語っていました(話は逸れますが、現在エイブラムス監督はハリウッドを舞台にした同性愛のロマンス作品を製作しているようです)。

たしかに『スター・ウォーズ』という作品には、人種や言語の異なる様々な者たちが登場します。かつてのレイア・オーガナが示したように性別も関係ありません。フィンが象徴するように人種も関係ありません。

『スター・ウォーズ』とは、すべての人々が等しく団結し、強大な敵と戦っていく物語なのです。したがって、そこに性の多様性が描かれることも至極当然といえるでしょう。

もはやこうした多様性の波は、ハリウッドのみならず映画産業全体に押し寄せています。今回話題になったシンガポールのように、寛容ではない国も依然として存在しますが、各地で権利運動が展開されていることも事実です。

『スター・ウォーズ』をひとつの転換点として、これからも多様性の理念は広まっていくに違いありません。

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