8月1日(木)より開かれている津田大介氏が芸術監督を務める、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が、3日(土)に中止が決まったことが報じられました。
この「表現の不自由展・その後」では、慰安婦を表現した少女像である「平和の少女像」の設置について、開始当初から物議を醸しており、同芸術祭の事務局に抗議の電話やメールが殺到していました。
中にはテロ予告や脅迫ととれるようなものもあったといいます。
今回の「表現の不自由展・その後」の中止の経緯などを調べてみたいと思います。
「表現の不自由展・その後」の展示内容
「表現の不自由展・その後」では公立美術館などで撤去されるなどした作品を、その経緯と共に二十数点を展示していました。
その中の韓国の彫刻家のキム・ソギョン氏とキム・ウンソン氏が制作した、慰安婦を表現した少女像である『平和の少女像』と、嶋田美子氏による昭和天皇の写真を燃やしている映像をモチーフにした「焼かれるべき絵」を巡って、ネットなどでも大きな論争となりました。
「平和の少女像」などに批判が殺到

「平和の少女像」については、愛知・名古屋市長の河村たかし氏からも「日本人の、国民の心を踏みにじるもの」として、設置を撤去するよう愛知県大村知事にに要請すると表明がありました。
SNS上で著名人からの批判が投稿されたりと、賛否両論の物議を醸すこととなりました。
僕の声が届いたのかな?
この穢らわしい展示物を片付けなかったら名古屋市民やめます。なう。— 高須克弥 (@katsuyatakasu) 2019年8月1日
私は昭和天皇の御真影を焼く映像を芸術における表現の自由で許されるとは思わない。例えばコーランを焼いたり、国旗を焼いたり、それを芸術として評価するのだろうか、そんなのは下品なプロパガンダだ。私費であっても非難されるであろう展示に税金が投入されているとは。#あいちトリエンナーレ
— フィフィ (@FIFI_Egypt) 2019年8月1日
批判や抗議の電話やメールが事務局へ殺到し、そして2日(金)朝、知事宛てに「ガソリン携行缶をもってお邪魔します」というFAXが届き、警察に被害届を出したことも明らかにしました。
このような経緯があり、実行委員会は3日(土)に「表現の不自由展・その後」の中止を決定しました。
津田氏によると、
現実に起きていることを誇張なくお話いたしますと、この企画が報道された7月31日(水)から、連日、事務局への電話が殺到しております。
もちろん企画の趣旨に対して問い合わせいただくことは問題ないんですけれども、中にはテロ予告ですとか、あるいは脅迫とも取れるようなものですとか、また電話に応対しただけの職員個人を追い詰めるような抗議電話が多くありまして、1日中電話が鳴り止まないという状況です。
その事務局への電話が営業時間だけではなく深夜にも及んでいるという状況で、その数が日々増え続けているというのが現状であります。
この状態が続き、来場者および職員の安全が危ぶまれる状況が改善されないようであれば、「表現の不自由展・その後」自体の展示の変更も含めた何らかの対処を行うということも考えています。
と説明していました。
「表現の不自由展・その後」の企画意図は
津田氏は今回の「表現の不自由展・その後」の企画意図について、このように語っています。
行政の責任というところですが、行政はトリエンナーレの一参加作家である「表現の不自由展」実行委員会が定めた「表現の自由。
これの現在的状況を問う」という展示会のコンセプト、趣旨を認めているのであって、この展覧会内で展示されたすべての、あるいは個別の作品への「賛意」として認めているわけではないということ。
ここをまず踏まえていただきたいと思います。
「撤去された作品の実物とともにその経緯を鑑賞することで、議論が分かれる『表現の自由』という現代的な問題について議論するきっかけにしたい」
「実物を見て判断していただきたい、ということが、この展覧会の揺らぎない趣旨であることをお伝えしたい」
とのことでした。
そして3日に行われた中止の会見でも津田氏は
(各地の美術館で)一度は展示されたが撤去されたという作品の性質上、沸き上がる反感などを可視化する企画だった。
と語っていました。
今回の件は「表現の自由」と、その作品を不愉快と思う人と両方の考えがあって、とても難しい問題だと思います。
表現をする立場の人達の観点から見ると、いろいろと規制されて行くことによって、「表現の自由」が日々失われて行くという危機感も感じさせられますよね。
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